2007年1月  1.正義とゆるし
 真の平和の柱は、正義と、愛に基づくゆるしです。真の平和は、正義の実りです。正義は権利と義務の尊重や利益と負担の公正な配分を要求します。しかし人間による正義は、個人やグループの持つ限界や利己主義にさらされるために、いつも不完全です。ですから、乱された人間関係をその根底から癒すゆるしによって、強められ、ある意味では補完されるのです。ゆるしは、「秩序の静けさ」(聖アウグスチヌス)へと続く正義に満ちた状態へ向かっています。その静けさは、一時的な敵意の中断ではなく、人の心の底を流れている深い傷を癒すものです。このような癒しには、正義とゆるしの両方が欠けてはならないのです。
 ゆるしは社会で現実となる前に、人々の心のうちに生まれるものです。ゆるしは何よりも個人的な選択であり、決断です。この決断の基準は、神の愛に置かれています。神はわたしたちの罪にもかかわらず、わたしたちを受け入れてくださいます。人間も神に倣って人をゆるすように招かれています。
 人による行いという意味では、ゆるしは何よりも、隣人との関係において、個人の心から自発的に出てくるものです。しかしながら人は、社会的側面をもっていますので、社会的な関係の中で個人が表現されます。ですから、社会的なレベルでも、ゆるしが必要になるのです。
写真: 藤井 瀞愁