2010年12月  1.独居老人
 「独りぼっちで、病のうちに、年老いて暮らす多くの人びと」への支援が、12月の一般の意向として取り上げられました。実際に2009年の厚生労働省の調査によると、我が国では65歳以上「単独世帯」は463万1千世帯にのぼり、その比率は全世帯の9.6%にあたり、そのうち約8割が女性であるといった結果が示されています。1986年の統計では、65歳以上の「単独世帯」は128万1千世帯でしたので、20年あまりのうちに4倍近くに増加してきていて、まさに高齢化社会における大問題なのです。
 原因となる要素は、配偶者との死別が想定されるのですが、継続して増加している離婚率も影響していると考えられます。未婚者は養子を迎えなければ独居に至ります。ところが、世帯という考えに基づいた統計ですので、老人ホームや修道院で暮らす人たちが単独世帯として区分されており、その人数はそれほど多くないと考えられますが、誰かと一緒に住んでいる高齢者がこの中に含まれていることも事実です。
 高齢者のひとり暮らしは、孤独死、自殺、夜逃げ、ゴミ屋敷などの事態に発展する可能性を常にもっています。人間として致し方ないことなのですが、加齢に伴って身体機能は低下しますし、記憶力も衰えます。ひとたび病となれば、他の助けなしに生活を続けていくことなど不可能になります。他の人々とのつながりがなければ、たちまち死が身近に迫ってくるので、その恐れと苦しみは想像を超える大きなものなのです。では、無縁社会といわれる今日、私たちはどこから何を始めればよいのでしょうか。「縁」の字は「ゆかり」とも読みます。「縁もゆかりも」ない関係の中に暮らす隣人が、「縁もゆかりも」取り戻すには何ができるでしょうか。
 ご近所との挨拶と声掛けをおいて他に、「縁」を結んでいく方法はないと言われています。その声掛けの中で、自分の周りに65歳以上の単独世帯の方がいるかどうかを確かめてみてはどうでしょうか。さらに、その方の健康状態についても情報を得るように心がけてみてください。統計からは1割弱の世帯が65歳以上のひとり暮らしだとされているのですから、周りの人の10人に1人は当てはまることになるのです。「独りぼっちで、病のうちに、年老いて暮らす人」はあなたの身近にもいるに違いありません。この1カ月をかけて、住まいの隣、そしてまた隣と「縁」を広げることを心がけて暮らしてみてはいかがでしょうか。