2016年4月  5.自然災害の被災者のために
 熊本県と大分県にまたがる広い地域を震源とする地震が発生しました。マグニチュード7を超える地震の規模は、阪神淡路大震災に匹敵する規模で、しかも二つの断層が連動して、震度7の地震が2度も発生し、多数の犠牲者が出ています。「きょうをささげる」でも、教皇と日本の教会の意向を離れて、今週は特に震災の犠牲者と、不自由な避難生活を余儀なくされている人々のために、祈りをおささげいたしましょう。
 5年前の東日本大震災の際の津波による被害のイメージがあまりにも強く残っていましたので、熊本の内陸で発生し、津波の心配のない第一波(14日の震度7の前震)の被災状況を把握した段階では、専門家を含めた誰もが、それほど多くの犠牲を伴わないまま、地震が収束していくと考えたのでした。しかし、自然災害は、特に地下で起きているマグマの活動やプレートの移動、断層やひずみについては、まだまだよく分かっていないことが多いのです。常識と予想を超えた本震が、収束に向かったと安心した被災地の人々を、深夜に突然襲ったことが、犠牲を増やした原因といえるでしょう。
 今回の一連の地震が、いつ、どのように収束に向かうか、誰にも予測できません。ですから、避難している10万人とも言われる人たちが、復興への第一歩として仮設住宅などの安全な住居を得る段階に至っていないのです。体育館や自家用車で、水も食料も生活必需品も行き届かない中で、健康を維持できない劣悪な環境のもとでの生活を余儀なくされています。
 遠く離れて生活する私たち一人ひとりは、何をすることができるでしょうか。義援金を拠出することの他に、何ができるでしょうか。行政や医療機関に所属する人たちは、総合的な救援体制の中で、それぞれに与えられた役割を果たしていくのでしょう。個人として、私たちは何ができるのでしょう。無力さに呆然としているほか、すべはないのでしょうか。
 祈りは、力になります。祈りは、被災した人々の心に、きっと届きます。この一週間で被災地の状況がすぐに改善されることはないかもしれませんが、「きょうをささげる」でともに祈りの毎日を過ごしている私たちが心を合わせて被災した人々のために祈ることで、きっと被災者にとって幸いな何かが起きるでしょう。祈りの力は偉大です。熊本地震の被災者のために、また世界で起こっている自然災害の被災者のために、心を込めて祈りをささげてまいりましょう。