2016年5月  1.女性の参政権
 今年の夏の参議院議員選挙からは、選挙権を行使できる年齢が20歳から18歳に引き下げられ、18歳以上の男女による普通選挙が行われます。今では何の疑問もなく女性が投票所に向かう映像がテレビなどで報じられますが、18世紀末にフランス革命によってもたらされた民主主義政治のあけぼのの時、参政権は男子のみにしか与えられていませんでした。200年前は、社会のあり方を決める政治の場面で、女性の人権は認められていなかったのですが、当時の文化の中では大きく疑問視されることはありませんでした。
 最も早く恒常的に女性に参政権が付与されるようになったのは、1869年のアメリカ合衆国ワイオミング州での選挙でした。しかし、この時はまだ女性には被選挙権が与えられていませんでした。その後、1894年に、南オーストラリアで、初めて男女平等の普通選挙が実現しました。そして、20世紀になって女性の参政権が次々と認められるようになり、21世紀にはイスラム圏の国々においても普通選挙が普及し、現在、純粋に女性参政権を認めていない国は、サウジアラビアとバチカン市国となっています。
 日本で普通選挙が実現したのは1925年でしたが、フランス革命後の状況と同じように、参政権は男性にしか与えられませんでした。大正デモクラシーという民主化運動の中で、女性の権利が主張され、女性でも裁判官になることができるような運動も展開されましたが、第二次世界対戦終了まで、女性が選挙権を手に入れることはできませんでした。
 1945年10月10日幣原内閣で婦人参政権に関する閣議決定がなされました。また、翌10月11日のマッカーサーによる五大改革の指令には、「参政権賦与による日本婦人の解放」が盛られていました。一方、戦争終結の10日後8月25日には、市川房枝さんによって「戦後対策婦人委員会」が結成され、衆議院議員選挙法の改正や治安警察法廃止等を求めた5項目の決議を、政府及び主要政党に提出しています。そして11月3日には、婦人参政権獲得を目的とし、「新日本婦人同盟」(会長市川房枝、後に日本婦人有権者同盟と改称)が創立され、婦人参政権運動が再開されました。
 その年の11月21日には、まず、勅令により治安警察法が廃止され、女性の結社権が認められました。次に、12月17日の改正衆議院議員選挙法公布により、女性の国政参加が認められ(地方参政権は翌年9月27日の地方制度改正により実現)、そして1946年4月10日、戦後初の衆議院選挙の結果、日本初の女性議員39名が誕生しました。
 日本と世界の女性参政権の歴史を学んでみると、450万年間いのちを繋いできた人類は、ほんのここ200年の間に、やっと政治的・社会的地位において、男女の機会均等を実現できたことになります。
 今月の世界共通の意向は「女性への尊重」です。制度的には平等が保障されていますが、依然としてさまざまな偏見や差別が残っていることも事実です。この地球で、女性への理解と尊重が一層深くなりますようにと、心を合わせて祈ってまいりましょう。