2016年8月  4.ドーピングと核武装
 ブラジルで開催されているオリンピックも21日の閉会式まであとわずかとなりました。自らの力を競技に注ぎ、全力を尽くして戦った結果として、敗者と勝者が決まっていきます。勝者は苦しいトレーニングを潜り抜けてきたその報いを、4年に一度の世界的な競技会で受ける光栄にあずかるのですが、敗者となった数多くの選手も、悔しさばかりではなく達成感や充実感も味わっていることでしょう。これまで大きな事件もなく、選手たちが競技に集中できたことは、何よりも幸いなことです。
 国際的な競技会で、今もなお戦火を交えている国々を代表する選手たちが、公正なルールの下で正々堂々と競い合う姿から、スポーツを通して育まれる他国の選手との関係がひいては世界平和につながることを、信じたいものです。一方で、勝利を目指すことに力を注ぐあまりに、薬物の力を借りて体づくりをするドーピングが、第一線で活躍する選手たちにまで蔓延し、しかも国を挙げてそれを推進してきたことまで明るみに出されました。とても残念なことです。競技の場でのフェアプレーはもとより、準備の段階でもルールを守ることが大切だと印象づけられました。
 国家を挙げてのドーピングは、果てのない軍備拡大を推進する諸国が、人類全体にとっての脅威である核兵器を秘密裏に開発し改良していく様子を連想させます。国家間で協力してドーピングを監視する機関が設置されているように、国際的な機関で核兵器の廃絶に向けてともに歩んでいくことが、切に求められています。秘密裏に核武装をしていく国々の国民一人ひとりは、平和を願って毎日を過ごしているのです。一人ひとりの祈りが力となって、核兵器のない社会へ歩みを進めていくことができるように、スポーツの祭典を見守りつつ、祈ってまいりたいと思います。