2016年10月  2.諸宗教の渦の中で
 日本のカトリック人口は約40万人です。この数字は、日本の聴覚障害者の数とほぼ同じです。人口の0.3パーセントにも満たない数字です。キリスト教全体を見渡しても、3パーセントにすぎません。一方、神道の氏子や仏教の檀家の数を統計的に見ると、その数は日本全人口の約2倍に達してしまいます。普通の日本人は、仏教の寺院の檀家であり、同時に近所の氏神が祭ってある神社の氏子だと言うことなのでしょう。
 そのような統計があるにもかかわらず、日本人は、自分がどの宗教に属しているかを表明することが、一般的ではありません。さらに、神や仏を信じることは、自分の弱さからだという風潮から、自分は無宗教だと宣言する人も少なくありません。
 ノーベル賞の医学・生理学賞で日本人の大隅良典さんが受賞しました。以前ノーベル賞を受賞した小柴昌俊さんは、物理学でその学問の粋を極めても、さらに不可思議な世界が存在していて、そこには人間の力を超えた何かが存在していると話されました。神は存在する、ということを、科学者なりに表現したこととして、受け止めることができるでしょう。神は存在することを前提としても、歴史の中でその神を、人間は様々な名前を付けて表現してきました。したがって、様々な宗教が、この世に存在しているのでしょう。
 さて、それぞれの人が、それぞれの心の中で畏敬の念をもって祈り拝んでいる神がたとえ異なっていても、その純粋な心を、互いに尊敬し合わなければなりません。今月の日本教会の意向は、「神を信じる人が互いのために祈り、諸宗教の交わりが平和の絆となることを証ししますように」です。日本人が、本来とても信仰心の強い人々であることを信じ、そして願いながら、名称が異なる神を、信仰心をもって拝んでいる隣人に心を重ねて、「祈りによる交わり」を意識しながら、この一週間を過ごしてまいりましょう。