2016年11月  1.難民をめぐって
 11月の教皇の意向に「難民を受け入れる国々」が取り上げられて、そのように苦しんでいる人々に生活の場を提供する政策を(一時的とはいえ)打ち出している国々が、国際的なネットワークの中でその努力にふさわしい援助を受けることができるよう、心を合わせて祈ることが奨められています。
 教皇が掲げるこの「世界共通の意向」は、人類全体にとって緊急性の高い課題について、カトリック、キリスト教といった宗教の枠を超えて、また、国境を超えて、その重要性を認識し、それを祈りの力によって改善の方向に向かわせようとするものです。日本で「きょうをささげる」運動として展開しているこの運動が「教皇による祈りの世界ネットワーク」という名称で新たな展開を試みている背景には、宗教や人種、国籍の違いを超えて、すべての善意の人々が祈りをささげることによって、きっと世界に平和が満ち溢れるという、教皇フランススコの強い望みがあります。ですから、私たち一人ひとりの小さな祈りを大きなうねりとしていくためにも、日々この意向で祈りをささげてまいりたいものです。
 実際にイギリスでは、難民についてのEUの方針が受け入れられず、国際的な連携の枠組みから離脱する方向が、国民投票によって選択されましたし、アメリカの大統領選挙でもメキシコや中南米からの移住者の取り扱いが争点になっています。難民が発生しない社会の創設、つまり、戦争や内戦、あるいは飢餓によって、生活の拠点としていた場所から移住しなければならない状況を生じさせない努力も大切ですが、ひとたび難民となって、今この時にも生活の拠点を築くことができない人々のために、一時的な措置にせよ人間らしい生活の場を提供することは、安定した生活の中に身を置く一人ひとりにとって、至極あたりまえのことなのでしょう。
 難民をめぐる諸問題に思いを寄せながら、この一週間の祈りをささげてまいりましょう。