2017年2月  2.難民を受け入れない国々
 2月の教皇の意向は、「苦しんでいる人たちへのなぐさめ」です。特に難民への配慮を求めています。ところが昨今、難民が国境を越えて移動して、安心して生活できる場所に移り住もうとすることを妨げる政策が、富める国、たとえば米国や英国で実行されています。特に米国ではアメリカ合衆国憲法に違反して、特定の9カ国の国籍を持つ人々の入国を拒否する大統領令が出され、国際的な反発を招いています。
 この入国拒否の理由として、テロの阻止が掲げられていますが、テロと国籍、宗教との関連性は、科学的にも論理的にも考えられることではありません。テロは、暴力によって現状を打破しようとする人々の野蛮な行為であり、あらゆる国籍、あらゆる宗教にもこうした人々が生まれる可能性が隠されているのです。ですから、テロ撲滅のために特定の国家や宗教を取りざたするのは、非常に稚拙な行為と言えるでしょう。
 先進諸国の何人かの首脳は、非人道的な入国拒否の大統領令に対して、反対の意向を示しましたが、日本の首脳は、「意見を述べる立場にない」と表明しました。その背景には、日本の難民政策があります。これまでたくさんの難民を受け入れて、居住や就労の機会を提供してきた米国が、これまでの方針を転換したことによる混乱の中にありますが、そもそも日本は、入国管理がとても厳しく、日本国政府によって難民に認定されることは、非常に希なのです。ですから、日本は、米国の新しい政策に反論する立場にないのです。法務省の速報によりますと、平成27年に難民認定申請をした者は7,586人で,過去最多となりましたが、 難民として認定された者はほんの19人でした。
 世界の世論が、難民の入国を制限しないようにと主張している今日、今一度日本の現状をしっかりと認識し、故郷で暮らすことができなくなった人々のために、私たちひとりひとりに何ができるかを、祈りの中で探して参りましょう。