2017年2月  3.公正な富の分配
 貧しさはどこから生まれるのでしょうか。
 私たちの社会では、富を再生産する仕組み、例えば会社や協同組合で創り出した財を、その生産手段を持っている者たちと、再生産のために労働を提供した者たちで分配することによって、それぞれが報酬を得る仕組みが、経済活動の中心にあります。生産手段には大きく分けて土地と資本があり、地代は土地用役に対する報酬であり、利子は資本用役に対する報酬であるとされます。一方で、賃金は労働用役に対する報酬だとされています。
 ところで、この経済活動に組み込まれない人たちがいることも、事実です。資本も土地も持っていない人で、働いていない人もたくさんいますし、子どもは経済活動の外にあります。自由な経済活動の仕組みでは、このような人たちに富や財を配分する仕組みがありませんので、富を得た人が税を拠出して財源をつくり、社会福祉や年金、保険などの社会政策によって、経済活動の仕組みの外にいる人たちへの富の配分を行い、これらの人々の生活を保障しています。また、家庭や共同体の中でその人たちを扶養しています。
 このような、経済活動の基本的な仕組みを考えると、貧しさが生じるのは富や財の分配の不公正にあることが分かるでしょう。一昨年、世界的に著名になったフランスの経済学者トマ・ピケティは『21世紀の資本』のなかで、経済的不平等が拡大していることに懸念を表明し、高所得者への課税の強化で分配の不平等を是正するよう提言しています。
 富の分配が公正になされるように祈りましょう。正義の推進は、御父の願いでありキリストの望みです。経済活動の外で生きている人たちも、人間としての基本的権利が保障されるように、社会の仕組みを整えて参りましょう。仕組みの外に置かれた人々に対しては、共同体の支えの中で、分かち合いながら生きていく道を歩めるように、祈ってまいりましょう。