2017年3月  2.震災から6年を経て
 3月11日に起きた大地震と原発事故の記憶は、被災した人々ばかりか、未曾有の災害の報道をとおして、またボランティアとして馳せ参じた体験をとおして、いまだに鮮明に残っています。私たちが暮らしている地球という太陽系の惑星は、今もなお自然界の法則に中で活動を続けている事実を、私たちに突きつけた出来事でした。
 そしてそれは、とてつもなく膨大な時間の流れの中で、ゆっくりと絶え間なく進んでいることも、忘れてはなりません。あの震災からもう6年もの歳月が過ぎましたが、およそ46億年の地球の歴史の中では、瞬(まばた)きの瞬間のようなほんのわずかな時にすぎないのです。ところが、その歴史の土台の上に私たち人類の「いのち」の連鎖が積み上げられてきたことは、だれもが否定できない事実です。「いのち」の尊さと、それをつなぐ責任とが、私たちの方の上に重くのしかかっていることが感じられます。
 震災によって、いのちの連鎖の妨げになることが、何とたくさん日常生活にあふれているかに気づくきっかけともなりました。原子力エネルギーが、その最たるものです。地球の温暖化を防ぎ、化石燃料に頼らない社会のシンボルのように言われていたこのエネルギーのしくみは、原子爆弾と何ら変わることのないもので、爆発を制御しながら徐々にエネルギーを取り出すか、一挙にエネルギーを放出させるかの違いだけなのです。ですから、ひとたび制御ができなくなれば、原子爆弾が炸裂したのと同じ状況が生じてしまうのは、自明のことだったのです。人間の知恵で完全に制御することができるから「安全だ」という神話は、活動を続けていて数百年に一度大地震を伴った地殻変動が生じるという地球の上では、決して「安全だ」とは言えないものなのでした。
 日本の教会は、昨年に『今こそ原発の廃止を』という書籍を刊行しました。2011年に発表された脱原発についての司教団メッセージを、科学的、哲学的、そして神学的に裏付けた書物で、私たち一人ひとりの生活様式(ライフスタイル)をどのように変えていくことが求められるかについても言及しています。
 6年を迎えるこの時、自分の生活をどのように整えて脱原発の時代にふさわしく過ごすかを考えながら、その方向に歩む勇気と力とが与えられるように、ともに祈ってまいりましょう。