2017年5月  3.ボコ・ハラム
 ボコ・ハラムはナイジェリアのイスラム教過激派組織の一つで、正式な名称は「宣教及びジハードを手にしたスンニ派イスラム教徒としてふさわしき者たち」と言います。ボコとは「西洋風の非イスラム教育」で、ハラムとは「罪」で、「西洋の教育は罪」という意味になります。
 ボコ・ハラムが世界を震撼させて事件として記憶に残るのは、2014年4月14日夜から翌15日にかけて公立の女学校を襲撃し、警備にあたっていた警察官数名と兵士一人を殺害し、多数の生徒をトラックに押し込め、ボコ・ハラムの要塞化された拠点があることで知られるサンビサ森林へと連れて行った生徒拉致事件です。第一報では85名の生徒が拉致被害に遭ったとされましたが、4月19日になると軍は129名の被害者のうち100名以上が解放されたと発表しました。後にそれは撤回され、21日になると生徒の保護者たちは234名の女生徒たちが行方不明であると発表しました。別の報告では329名の少女が誘拐され、53名が逃亡に成功し276名がいまだ行方不明であるとされました。
 イスラム教という宗教の名で、聖戦(ジハード)を呼びかける過激なテロ集団は、政府とも対立して、平和な社会を目指す市民の恐怖となって存在しています。私たちはイスラム教そのものが過激な思想・宗教だと思ってしまいがちですが、決してそのようなことはありません。宗教の名を借りて、自分たちの暴力や破壊活動を正当化しているだけで、むしろイスラム教を信じている人たちは、たいへんな迷惑を被っているのです。
 では、なぜこのような過激派集団が次々と現れてくるのでしょうか。そして、ことごとく西洋文明を否定して、テロや破壊活動を行うのでしょうか。その原因は、資本主義経済に潜んでいると言っていいでしょう。資本主義は放っておけば、富める者がますます富み、貧しい者がますます貧しくなる仕組みを内包しています。それを補正するために、税の制度や社会政策、社会福祉など、経済だけでは解決できない他のルールを設けてかろうじて貧富の格差のバランスを保っています。その「かろうじて」のバランスがくずれているところでは、貧困や飢餓が頻発してしまうのです。その状況を見て、資本主義の矛盾をすべて西洋文明の否定へと短絡的に結論づけているように思われます。
 根本的な解決は、資本主義に変わる新しい経済システムの構築ですが、いまだそれは叶えられていません。過激な思想に走る人々に愛の大切さを伝えることは重要な使命の一つですが、皆が知恵を出し合って、生産された新しい財をすべてに人が平等に分配できるシステムが一日も早く構築されるように祈ることも、とても大切なことなのではないでしょうか。