2017年10月  3.レールム・ノヴァールム
 「レールム・ノヴァールム」とは、ラテン語の「新しき事がらについて」という意味を示した言葉で、ローマ教皇レオ13世が1891年5月15日に出した回勅の名称です。
 カトリック教会が貧富の差や経済・福祉における国家の役割について説いた、カトリック社会教説の最初のもので、このことから史上初の「社会回勅」として評価されています。その内容は、資本主義・社会主義双方への批判に充てられていて、副題に「資本主義の弊害と社会主義の幻想」とあるとおり、「少数の資本家が富の多くを占有する行き過ぎた資本主義によって、労働者をはじめとする一般庶民が搾取や貧困、悲惨な境遇に苦しむあまり、無神論的唯物史観を基調とした社会主義への移行を渇望しているが、それで人間的社会が実現するというのは幻想である」として、資本主義と社会主義(共産主義)の双方に批判的な視線を向けました。
 19世紀に発表されたこの回勅の精神は、21世紀の今もなお、教会の中に引き継がれています。働く者の権利を守り、その労働にふさわしい賃金が支払われるようにとの思いがその中心にあります。10月の教皇の意向は、このレールム・ノヴァールムの精神を受け継いで、今なお長時間労働や低賃金によって搾取されている労働者の保護を訴えたものとなっています。
 そこで今週は、苦しんでいる人、虐げられている人とともに歩む教会を意識して、身の回りに暮らす人々の中で自分の労働が正当に評価されず、途方に暮れている人と連帯し、その方々が真の解放に導かれますようにと、心を合わせて祈ってまいりましょう。そしてまた、仕事につきたいと願う方々一人ひとりに、ふさわしい労働の場が与えられますようにと、祈りを続けてまいりましょう。