2017年11月  4.ヴィパッサナー瞑想
 ヴィパッサナー瞑想とは、インドから南に伝わった仏教である上座部(テーラーワーダ)仏教で伝えられてきた瞑想法です。ブッダが悟りを開いた瞑想法であり、ブッダの教えた「生きる技」「自己観察による自己変革の方法」「心のトレーニング」と紹介されています。現代のようにストレスの多い社会にあっては、「気づきの瞑想」や「マインドフルネス瞑想」とも呼ばれて、宗教の壁を越えて全世界に広がっています。
 ヴィパッサナー瞑想の中心は、「今ここをあるがままに価値判断なしに気づく」というもので自分の感覚・感情・思考に対して心の距離を取って自己観察する瞑想法です。これは特にネガティブな感覚(痛み)感情(怒り)思考(決めつけ)から離れると同時に、その存在を無条件に肯定していく意識の営みです。キリスト教の観点からは、イエスの教えたアガペの愛、すなわち無償・無条件の愛の内容と重なることが分かります。
 さて、教皇の11月の意向は、「アジアのキリスト者たち」で、ことばと行いによって福音の証し人となり、特に他宗教を信じる人たちとともに、対話、和睦、相互理解を推進することができるようにと祈ることを、世界中のキリスト者に呼びかけています。今ここに紹介しているヴィパッサナー瞑想は、対話、和睦、相互理解の推進の具体的な現れであって、しかも、共通の瞑想法によって霊的に深められ、正義の平和の推進に自らのすべてをささげることができるように養成されます。
 この一週間の祈りは、ヴィパッサナー瞑想の基本である、呼吸瞑想を用いて、教皇の意向で祈りをささげてみましょう。姿勢を正して、自然な呼吸をしながら、手を腹に当てて、吸ったときに少し膨らむお腹の感覚に気づきます。口を閉じて鼻で呼吸すると、鼻の穴を通過する外気の冷たさを感じることができるでしょう。意識を集中させていきながら、「アジアのキリスト者たち」のために、祈りをささげてみましょう。
 なお、「きょうをささげる」の運動を推進している祈祷の使徒の事務局が置かれているイエズス会無原罪聖母修道院では、キリスト教的ヴィパッサナー瞑想に基づいた黙想が企画されています。ご参加をお待ちしています。