2017年12月  5.根がないと花は咲かない
 「教皇フランシスコと話そう」というイベントが、18日に行われました。上智大学とバチカンとが同時中継されて、8名の若者の質問に教皇フランシスコがその場で答えるイベントでした。その記録は、1週間に限ってYouTubeで見ることができます。「教皇フランシスコと話そう」で検索するとそのサイトを見つけることができます。是非ご覧ください。
 さて、一人の学生が、若者に対して抱いている希望と懸念は何かと質問したのに対して、教皇が答える場面があります。教皇は、もちろん希望を抱いていると答えながら、懸念について多くの時間を割いて答えていました。
 一つは、若者を取り巻く環境が加速していることです。急ぎすぎて疲れてしまい、自分で動くことがおっくうになってしまうと指摘していました。ソファーの上で動こうとせず、その場の状況に安住してしまうことを懸念していました。
 もう一つ、ていねいに説明してくださったのは、ルーツをしっかりと見つめて、過去、現在、未来、をしっかりと結び合わせて将来に向けて歩む姿勢が大切だということでした。そのために、国として、家族として、人間として、どのようなルーツをもっているのかを掘り下げることを奨めています。黒澤明監督の映画「八月の狂想曲」についてふれ、若者たちが高齢者と話して、自分のルーツを見いだすように奨めたのです。この映画は、長崎の人里離れた山村を舞台に、被爆体験を持つ祖母と四人の孫たちとのひと夏を描いたものです。教皇は是非この映画を見るようにとも語っていました。また、アルゼンチンの詩人ベルナルデスの「地面の中にあるルーツ(根)が無ければ花は咲かないし、実も実らない」という主旨の詩に言及して、ルーツをしっかりともつことの大切さを話されました。
 もうお気づきと思いますが、このメッセージは、教皇の今月の意向と重なるものです。「高齢者たちが知恵と経験を生かして、信仰を次の世代につなげることができますように」との祈りは、「教皇フランシスコと話そう」というイベントの中でも、若者たちに伝えられました。私たちも心を合わせて、若者たちのルーツ探しに積極的に協力してまいりましょう。
 2017年のこのコーナーは、今回が最終回となりました。毎回のご拝読、ありがとうございました。教皇さまの意向に合わせて日々をていねいに過ごしてきたこの一年に感謝し、来たる2018年が正義と平和に充ちた年となりますように、お祈り申し上げます。
 すばらしいクリスマスと新年をお迎えください。アーメン。