2018年5月  2.貧困とは
 「貧困」とはどのように規定されているのでしょうか。社会学や経済学では、生活に必要な物を購入できる最低限の収入を表す指標として「貧困線」を用いています。それ以下の収入では、一家の生活が支えられないことを意味しています。OECD(経済協力開発機構)が定めた計算方法は、等価可処分所得(世帯の可処分所得(いわゆる手取り収入)を世帯人員の平方根で割って調整した所得)の中央値の半分の額で算出します。厚生労働省は、3年ごとに行う国民生活基礎調査の大規模調査から各種世帯の所得等の状況を把握して、それを発表しています。最新の資料は2009年の統計ですが、貧困線の実質値は112万円で、これに満たない世帯員の割合となる「相対的貧困率」は 16.0%でした。
 OECDでは、この指標を用いて国際間比較を行っていますが、日本はこの年に調査された35カ国の中では、イスラエルの20.9%、メキシコの20.4%、トルコの19.3%、チリの18.0%、アメリカ合衆国の17.4%に次いで6番目に相対的貧困が高い結果が示されています。先進国でも相対的貧困率が高いのは、生活水準も物価も高い環境の中で生活しなければならないからです。因みに、18歳未満だけを対象に算出した貧困率は15.7%でした。
 日本の教会は、子どもの貧困の解消を意向として掲げています。そして「日本社会全体が支え合うことができますように」と結んでいます。社会政策の枠や福祉の制度の狭間にあって、公的な支援を受けることが難しく、食べるものにも事欠く生活を余儀なくされている子どもたちがいることが分かってきました。緊急の援助の手を差しのべることは、私たち一人ひとりに求められる分かち合いの実践です。祈りと共に具体的な行動が求められています。
 一方で、相対的貧困率を下げるために何が必要なのかを考え、日本の政治の中でその施策を推進できるような努力も欠くことができません。そもそも、自由経済システムの中では、貧富の差はますます拡大していく傾向があります。ですから、富の分配における正義が推進されるようにと祈ることも忘れてはなりません。貧困によって子どもの健やかな成長が妨げられることがないようにと、祈りをささげてまいりましょう。