2018年6月  4.母子家庭の貧困
 子どもを養育しながら離婚を余儀なくされたり、あるいは独身で子どもを出産するなど、母子家庭になる経緯はさまざまですが、母子家庭が経済的に困窮している状況が、深刻な問題となっています。全国にはおよそ120万世帯の母子家庭が存在していますが、母子家庭の平均年収は一般世帯の半分にも満たないことが明らかになりました。そして、母子家庭の半数以上が貧困で苦しんでいる状況にあります。
 しかしながら、先月「見えない家庭の中」と題したこのコーナーでも述べましたように、家庭が貧困の只中にあって日々苦しみの中で生活している姿は、なかなか表に現れてきません。経済的に困窮していることを知られると、さまざまな憶測によって、精神的にも追い詰められてしまうのでしょう。誰にも相談することができないまま、もう食べるものもすべてなくなって、やむを得ず子どもと一緒に死を選択する無理心中しか道を見いだせなくなった母親も、少なからずいるのです。
 では誰が、このような状況から子どもと母親の生命を救うことができるでしょうか。福祉が制度的に整っていなかった時代には、人々は共同体(コミュニティ)の支えの中で、このような境遇におかれた母と子を育んできました。しかし、今やそのような共同体は崩壊しつつあります。家族・親戚を中心にした血縁に基づく共同体は脆弱になっています。都会では、ほとんどの家庭が親と子の核家族で、祖父母や親戚との関わりは希薄になってきています。隣近所をつなぐ糸もほとんどありません。隣に誰が住んでいるのかさえ知らないまま日常が過ぎ去っていく状況では、地縁を基軸とした共同体も、貧しさを分かち合うことはできません。
 今月の日本の教会の意向である「家庭の平和」をもたらすために、「親子・夫婦・兄弟が互いを尊重し信頼と愛にもとづく家庭を築くことができますように」と祈りながら、実際に困窮した生活に追いやられた人々、福祉の網からこぼれ落ちた人々に気づき、分け隔てなく私たち教会が受け入れることができるように、ともに祈ってまいりましょう。