2018年7月  1.疲れて孤独な司祭
 今月の教皇の意向は、「教会での奉仕に疲れを感じ、孤独に陥っている司祭が、主イエス、そして友情で結ばれた他の司祭たちとの親しい交わりの中で、安らぎを得ることができますように」と祈ることです。世界に発信されるこの「教皇の祈りの世界ネットワーク」でこのような意向が掲げられるということは、司祭たちが疲れていて、その上孤独に陥っていると教会は認識し、そのことに危機感を抱いていることの表れです。
 莫大な量の情報が飛び交う現代社会にあって、真理を探究し、人々の神との交わりのために奉仕する司祭は、宣教司牧という使命を果たす中で、実に大きなストレスを感じながら日々を過ごしています。さらに、使命を果たすにあたって担わなければならない仕事の量が膨大なので、自分を犠牲にしてまでもそのすべてをこなして奉仕することが自分に求められていると思い込んでしまいがちです。すると、睡眠を短縮し、食事を軽視し、疲れが翌日に持ち越され、人とのコミュニケーションがおっくうになり、使命感に燃えながらも心身ともに疲弊した実にアンバランスな生活が、来る日も来る日も続く状態になってしまいます。
 教皇が掲げているように、鍵は「友情に結ばれた司祭たちとの親しい交わり」です。司祭職への召し出しをいただいた者でしか理解し得ない課題や悩みを、分かち合いながら生きていく道です。ピア・カウンセリングという考え方があります。これは1970年代初めにアメリカで始まった障害者の自立生活運動の中でスタートしました。障害を持つ当事者自身が自己決定権や自己選択権を育て合い、支え合って、隔離されることなく平等に社会参加していくことを目指していましたが、障害者でしか理解し得ない課題や悩みを仲間(ピア)同士で互いにカウンセリングし合って運動を進めていく基本姿勢のようなものです。障害者は孤独になりがちで、疲れを感じていることが多かったのですが、このピア・カウンセリング、つまり仲間同士の分かち合いによって、障害者の社会的地位を向上させ、自らも安らぎを得ることができるようになりました。
 今週は、疲れて孤独な司祭が、仲間同士の分かち合いの大切さに気づき、心を開いて分かち合い、翌日までストレスを持ち越さずに、その日の精一杯の奉仕に招かれますようにと、祈ってまいりましょう。