2018年8月  1.家庭は宝物
 現代は「個(孤)」の時代と言われ、個人主義がもてはやされ、若者から高齢者まで、各世代に単身者が増え、一家団欒よりも「孤食」が話題となったりしています。東日本大震災を経験した日本社会は家族のきずなの大切さを再認識しましたが、はたして家族のきずなは強くなっているのでしょうか。
 いじめなど、子どもや若者を取りまく様々な問題があります。いじめている子どもは、「自分をもっと愛してほしい」と叫んでいるのではないでしょうか。家庭は、子どもが愛を体験し、自分の存在を肯定的に受け止めてもらって自己受容し、自立していくための大切な場です。愛された体験をじゅうぶん持てずに育った子どもは、何らかの問題を抱え、愛情の欠乏感が怒りの感情として現れてくるとも言われています。
 教皇フランシスコは、2014年の「家庭」がテーマのシノドス(世界代表司教会議)に向けて、家庭は、交わりと祈りの場となるように、福音の学びの場である小さな教会として互いに愛し合って生きる場となるように、また、傷ついた人が慰められ、いやされる場となるように、と祈りました。このような様々な機能を兼ね備えた家庭は人間が考え出したものではなく、神が創られたものです。
 家庭がその機能を十全に果たしていくためには、私たち個々人の努力だけでなく、制度上の整備が不可欠です。昨今では、「ワーク・ライフ・バランス」とよく叫ばれています。家庭を大切にすることが可能な働き方の構築や、働く人が家族とともに過ごす時間をもっと持てるように働き方を変えていくことなど、そのためにはルールの改革とともに労働する側の意識改革も必要となります。また、家庭を維持し、子育てが可能になるだけの収入の確保は雇用の安定とともに大切です。親が安心して働けるための保育園の充実など、子育て環境の整備も、政治の重要課題でしょう。このような制度が充実し、整えられてきた国においては、人口も増え始めていると言われています。
 教会とともに、個々の私たちのみならず、経済界の人々、政治家たちが任された領域で家庭を大切にし、一人ひとりが安定した家庭の中で喜びを持って生きていくことができる社会をつくり上げていけるように祈ってまいりましょう。