委ねる
 私の娘は、小学校の5年生位から、よく学校を休むようになり、お医者さんに相談したところ、登校拒否症だと診断されました。
 子供の状態は、日々ひどくなり、真黒などろどろしたものが覆いかぶさっているような重苦しい毎日でした。
 良いカウンセラーがいると聞くと、わらをも掴む思いでそのカウンセラーのところに足を運び、不登校の子供達のよいグループがあると聞けば、通わせたりしていましたが、何をやっても結局は、失敗に終わるという有様でした。
 その内、娘に幻聴や幻覚が起き、かかりつけの精神科医から、このままでは、統合失調症になる危険性が高いと言われました。
 娘が統合失調になるなど、想像もできず、娘を治してくれるなら自分が身代わりになってもよいと思いました。しかし、自分たちではどうすることもかなわず、頼れるのは、精神科医だけで、医者の指示は何でもやりました。けれども、状況は一向に良くならず、不安と恐ろしさは強まる一方で、このままでは、心労の余り妻の精神状態もどうにかなってしまうのではと、心配で万策尽きた思いでした。
 こんな或る晩、親しい司祭から電話で、“神様は、決して悪いようにはなさらないんだよ”と言われました。
 これを聞いてハッとしました。「そうだ、神様は決して悪いようにはなさらないんだ。神様に全てお任せしよう。それしかない」と妻と話し合い、祈りました。そうしたら、娘が統合失調になるかもしれないということが、すっと受け入れられるような静かな気持ちになったのです。
 不思議なことに、この日を境に、娘がぐんぐん良くなり、幻聴幻覚もなくなり、精神科のお医者さんからこんなケースは初めてだと言われるほどで、その後、数年経って学校に通えるようになりました。
 この出来事は、“ゆだねる”ことの大切さを教えてくれた貴重な体験として、わたしの心に刻まれています。
〈神奈川 60歳男性 自由業〉
画: 中島 範二
(出来事に聴く 64 2004/8/27)