小さい者の中に私はいる
 私は、最近まで、都内のホームレス支援のグループホームで働いていた。その中でも、2年前ぐらいに入居してきたKさんという方の出会いが忘れられない。このKさん、どこの病院も施設もお手上げでということで、私たちの施設に送られてきた。うちで我慢できなければ路上しかないという状況であるのに、すぐにお偉いさんとよばれる方に文句の電話をしたり、用もないのに救急車を呼んで大騒ぎしたり、はたからみたら漫画の世界だが、スタッフの私たちは大迷惑を被っていた。そんなKさんのお世話から逃げたくて、毎日ミサで「神さま、Kさんによい施設があれば移動させてください。そして、今日は他のスタッフにKさんのお世話をさせてください」と真剣に祈っていた。しかし、神さまは負けない。「Kさんが騒いでいる。今すぐ行ってほしい」と私の携帯に連絡がよくきた。しぶしぶお世話をしたのだが、毒舌Kさんの私に対する文句は、日に日にレベルを上げてきた。
 そんなある日、Kさんは、「あなたは、男性に尽くす愛が足りん。それだから、まだまだお嫁にいけないのだ」と、痛い盲点をついてきた。でも、本当かもしれない。たしかに私はKさんに愛のない傲慢な態度だった。このままお嫁にいけなくては困ると我に返った。私自身顔には出さなかったが、たまに泣きたいぐらい辛い事があった。そんな時、「無理するな。もっと自分を大切にしなさい」とKさんは、不思議なぐらい私の内面を読んでいる。みんなから嫌われているKさんの中に神さまがいるとだんだん思えるようになってきた。神さまがKさんをとおして、私を心配したり、教育してくれているのだ。いつしかKさんと向き合うのが楽しくなり、Kさんのワガママもある時から花嫁修業と受けとめ、神さまや、未来の旦那さまに奉仕するような気持ちに変えられていった。
 そのKさんから、ある日、「合格」をもらったのだ。「もう十分私に親切にしてくれた。早く良い旦那を見つけなさい。あなたには、同じ信仰のある方がいい」と預言者のように言い放った。そして、Kさんは、今、聖母のメダイをもちながら、私が早く結婚できるよう祈ってくれている。結婚相手が現れたらまっさきにKさんに報告したいと思っている。「小さき者の中に私がいる」という主イエスの言葉が忘れられない。Kさん、ありがとう。
〈34歳女性 職業コーディネーター〉
* ふりかえりのヒント*
1.自分と合わない人、苦手な人から学ぶことはないだろうか。
2.小さい人々の中にイエスがおられることを実感することはないだろうか。
(出来事に聴く 104 2006/6/9)