犬との散歩道で
 時折出会う老人が、向こうから歩いてこられた。「犬の散歩、朝夕大変だね。」と笑顔で声を掛けて下さる。
 ひょうひょうとした風貌。麦藁帽子に野良着、そして地下足袋という出で立ち。日課の畑仕事に出かけられる途中とのこと。少し前に、老人が鍬で土を耕している姿をその畑で見かけたことがあった。野菜のことを心にかけ、丹精込めて育てておられる姿が心に残っている。
 この小柄な農夫である老人に、私はなぜか以前から心引かれるのを感じていた。陽に焼けた顔は、人生の悲しみ喜びを黙って胸に納めておられるように見える。命の豊かさ、暖かさ、落ちつき、安心感、深い智恵・・・・・この老人から伝わってくる感覚はどこからくるのだろうか。
 ゆっくりと静まり、老人の姿を想う。それは、慈しみの神に重なっている。私たちの現実を、いつも心に留めて見守り育ててくださる神を、私はその老人の姿に見ているからだと気づかされている。
〈56歳女性 主婦〉
* ふりかえりのヒント*
1.日常生活の中で、道端に咲いている草花の美しさに気づくようにように、さりげない出会いや微笑ましい出来事に安らぎ、幸せな気持ちになることがありませんか。
2.通り過ぎてしまわないで、想いめぐらし味わうことが習慣づければ、さらに豊かに生きることができるのではないでしょうか。
3.人を幸せにするのは、何かをしてあげることよりも、自分の幸せが自然に伝わることかもしれません。
(出来事に聴く 115 2007/6/8)