笑顔のプレゼント
 ある日、いつものように、急いで駅に向かっていると小さな4歳位の男の子がお父さんの自転車の後を三輪車で一生懸命に追っていました。この坊やが懸命にこいでいるのを見て、普段は気づかないでいたのですが、この道が少しの登り気味なのです。思わず「がんばって!」と声をかけると、彼は私を見て、こぼれるばかりの満面の笑顔で挨拶してくれました。お父さんは少し先のfamily martにすでに着き、自転車を降りて私たち二人の光景を不思議そうに見ておられました。知らない人といかにも親しげな様子で関わっている息子を不思議に思われたのでしょう。
 僅か1分にも足りない出会いでしたが、丁度その時見上げた晴れ晴れとした青空のように、この小さな坊やは、さわやかな幸せを私に運んでくれました。思わず心の中で「神様、ありがとう!朝からこの素晴らしいプレゼントを!」と言いました。
 軽い足取りで駅に向かいながら、知らない人にこんな笑顔がすぐに返せるなんて、この子はきっと家庭で愛されて育っているのだろう・・なんと幸せな子だろうと思いました。
 またこの坊やにどこかで出会ったとしても、恐らく気付かないだろうと思うけれど、今も思い出すたびに、幸せな気持ちがよみがえってくるあのすばらしい笑顔のおくりもの、全身から溢れ出ていた清々しいあの雰囲気はいつまでも新鮮なものとして残るでしょう。

“愛する事、それは人を幸せを望むことではなく、
 自分の幸せを他の人におくることです。”
――Francois Garagnon

という言葉は本当にそうだとしみじみ思うのです。

 人は、誰でも、家族、友人、まわりの人たちを幸せにしたいと望み、時には涙ぐましい努力をしてもむなしい結果に終ることもあるのですが、この坊やのように、一つの微笑み、優しいまなざしがもたらす大きな力には、案外気付いていないのかも知れないと新たに思いました。
〈60代 修道女〉
(出来事に聴く 121 2007/9/7)