犬を愛したおじいさん

 昔々、とてもやさしいおじいさんがいました。ひとり息子といっしょに非常に幸せに住んでいました。そのおじいさんには特技がありました。それは犬を作るという技術でした。とてもやさしい方で、犬を一匹一匹心を込めて作っていました。自分の幸せを、犬たちと共に分かち合いたいと思って作ったのです。いつのまにか自分の家は、大きい犬や小さい犬でいっぱいになりました。息子と相談した結果、犬たちを近くの野原に出して、餌をふんだんに与えて、皆自由に伸び伸びと育って幸せに過ごすように願って、それを犬たち自身に任せました。

 数日後、気になっていたので息子といっしょに犬を見に行きました。近づくにつれて、犬たちの吠え声や鳴き声が聞こえてきました。足を早め、そこに見た有様は非常に苦しいものでした。犬たちは皆争って、噛みつき合い、殺し合っていました。

 非常に心を痛めた親子は、どういうふうに犬たちを救うことができるかということについて話し合いました。一匹一匹を別の木に縛りつけたらどうかなどと考えていましたが、殺し合っている犬たちの中に入るだけでも危険ですし、また、不自由になった犬たちも幸せにならないでしょう。

 考えているうちに、息子の顔が輝きました。「お父さん、僕が犬になります。犬になって彼らを救います。」 父親は言いました。「犬になったら殺されるに決まっている。強い犬でなく、弱くて惨めなものにならないと、苦しんでいる犬たちは信じてくれないし、お前の言葉を聞きもしないだろう」と。息子は言いました。「私はこの犬たちに、お父さんに愛されていることを知らせたい。そして愛し合って生きるように教えたいのです。おっしゃる通り、聞きもしないで私をも殺してしまうでしょう。弱くて、皆に捨てられるような惨めな犬になるから、死ぬ覚悟でいます。しかし何匹かの犬たちがお父さんの愛を信じて、その教えを受け入れ、全世界の犬たちに教えてくれるでしょう。そしてやがては、全世界の犬たちが愛し合って生きられる社会に変えてくれるでしょう」と。

  
画: 塩谷 真実
  

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