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私が学んだ最も大きなこと

 私は14歳、12歳それに3歳の子供の母親です。最近大学を卒業しました。最後の学科は社会学でした。この学科の最後のテーマは“微笑み・スマイル”でした。課題は、外に出て行って、3人の人に微笑んでみて、その反応をまとめるということでした。私は人なつっこいところがあって、いつでも誰に対しても笑顔で接しているし、いつでも気持ちよくこんにちはと挨拶するので、この課題はなんなくできてしまうと思っていました。
 この課題が出てからしばらくたった寒い朝、夫と一番下の息子と一緒にファーストフードの店に入りました。私たちはこうやって子供と一緒に過ごす時間を作っているのです。
 私たちは順番を待って列に並んでいました。すると突然周りの人たちが後ずさりして私たちから離れて行ったのです。そして私の夫も後ずさりして私から離れたのです。何故みんなが私から遠ざかったのか知ろうとして後ろを振り返って、何とも言いようのない妙な気持ちになって立ち尽くしてしまいました。振り返ると長い間お風呂に入っていない汗と垢のあのすえたような匂いがしたのです。私のすぐ後ろには見るからにホームレスと分かるおじさんが2人立っていたのでした。
 私がすぐ後ろに立っていた背の低い男の人を見下ろすと、彼は私に“微笑んだ”のです。しかも彼の青い目は言ってみれば神の光をたっぷりとたたえて、受け入れてもらえる先を求めていたのです。
 彼は手の中に握りしめている数枚のコインを無意識に数えるようにいじりながら「こんにちは」と言ったのです。その後ろにいたもう一人の男は落ち着きなく手先をもじもじさせていました。この二人目の男はすっかり動揺していて、青い目の男にすがり付いているということがすぐに分かりました。私はこの二人と一緒にそこにいて何故か涙が出てきたのです。
  
 その時、私は心の奥から突き動かされるものを感じ、青い目の男に近づいて抱きしめたのでした。その瞬間レストラン中の視線が私の一つひとつの動作に集つまっているのが分かりました。
 私は微笑んで、カウンターの若い娘に追加で2人分朝食を別なお盆に載せてくれるように注文しました。そしてテーブルの角を回って、二人が止まり木のように座っている席に行き、お盆を置いて青い眼の男の冷たくなっている手に触れました。彼は私を見上げ、目に涙を浮かべて「ありがとう」と言ったのです。
 私はかがみこみ、彼の手の甲を軽く叩きながら「これはあなたのためにしているのではないのよ。神様がここで私を通してあなたに希望を差し上げようとしているのよ。」と言ったのです。二人の所を離れ、夫と息子の所へ戻ろうと歩き始めた瞬間、涙がどっと出てきました。
 私が自分の席に座ると、夫が私に微笑みかけて「何故神様は君を僕に下さったのかわかったよ。僕に希望をくれようとしていたんだ。」と言ったのです。
 私は最後の授業にこの出来事を書いてもって行きました。先生は私のレポートを読むと、私の方を向いて「これを皆に読んで聞かせたいけど、いいかしら?」と聞いたのです。私は静かにうなずきました。
 彼女は私のレポートを読み始めました。それを聞きながら、私たちは人間としてそして神という存在の一部として、他の人々を癒し、そして癒されるという必要があるということを分かち合っているのだと私自身分かったのでした。
 私なりのやり方でファーストフードのレストランで人々の心に触れ、私の夫、息子、そして最後の授業では先生や同窓生の心にも触れたという体験でした。こうして私は一番大きなことを学んで卒業したのでした。それは無条件に受け入れるということでした。

“MORE STORIES of LIFE and LAUGHTER”Fr.Bel San Luis, SVD
画: 泉 類治


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