こころの散歩
鷲か鶏か
鷲か鶏か
あるアメリカインディアンがこんな話をしてくれました。
勇敢なインディアンが一人そびえる山の頂きに登り、岩の間の鷲の巣に卵があるのを見つけました。そこで家に持ち帰り、めんどりの巣に入れました。鷲の子は卵からかえり、鶏のひなたちと一緒に大きくなりました。
それからずっと、鷲は自分は鶏だと信じ、鶏たちと同じように暮らしました。つまり、こっこと鳴きながら、ミミズや昆虫を捜して地面を掘り、鶏たちが時にするように、羽をばたつかせて、二、三メートル飛んだりしていたわけです。
月日が経ち、鷲は年をとりました。ある日、澄んだ空高く、立派な鳥が優雅に、しかも堂々と金色の力強い翼を広げ、気流にのって舞うのが見えました。
老いた鷲は感心して空を見つめ、「あれは何だい」とかたわらにいためんどりにたずねました。「あれは鳥の王様、鷲よ」とめんどりは答えました。「でも、見ても仕様がないわ。しょせん私たちとは違うのだから。」
そんなわけで、鷲は二度とその姿を思い出すこともなく、わが身を囲いに住む鶏だと信じきって生涯を終えました。
画: 和田 耕一