こころの散歩

寒い日には凍えることだ

寒い日には凍えることだ

 凍えるような寒いある日、ラビと弟子たちがたき火を囲んでいた。
 師の教えるところをオウム返しに繰り返すのが弟子の道であった。そんな弟子の一人が言った。
 「こんな凍えるような日にどうしたらいいか知っているよ。」
 「何だ、それは。」 一同が言う。
 「暖まることだ。それができないなら、どうしたらいいか知っているぞ。」
 「どうするんだ。」
 「凍えるんだ。」

 あるがままの現実をまったく拒むこともできないし、そのままに受け入れることもできない。これが人間だ。現実から逃げだすのは、自分の足から逃げだすことに、また現実を受け入れるのは、自分の唇にくちづけするのに似ている。
 そこで、なすべきことはと言えば、見て、分かり、安んじることである。

アントニー・デ・メロ 著 / 裏辻 洋二 訳 「蛙の祈り」(女子パウロ会)より
  

ページ上部へ戻る