こころの散歩

母の手

重い腎臓病で入院した女の子が突然発作を起こし、医者と看護婦の必死の手当てで危機を脱した。一同ほっとした途端、子供が自分を取り巻いている医師や看護婦を両手で押し退けて、「お母さん」と叫んだ。いつの間に入ってきたのか、ちょうど見舞いにきたお母さんが、部屋の片隅に、手を胸にあて握りしめ、立ち尽くしていたのだった。子供が探し求めていたのは医者や看護婦の手ではなく、母親の手だった。

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