こころの散歩

献げもの

献げもの

 誰の知り合いというわけでもなかったが、高貴な人がスケーティスに金を持参して来たことがあった。そしてそれを兄弟たちに分けてやって欲しいと砂漠の司祭に頼んだそうだ。その司祭が、「ここにいる兄弟たちには不要のものです」といったのだが、その人は是が非でもと言って一歩も引かないばかりか、持参した金のすべてを教会の入り口にあった籠に移し入れた。そこで司祭が、「必要と思う人は誰でもそこから取っていくように」といった。しかし誰もそれにさわるどころか見向きもしなかった。そこで司祭がこう言った、「神様はあなたの献げものを受けてくださった。さあ行って、それを貧しい人たちに分けておあげなさい」。するとその人は大いに満たされて去っていった。

  
画: 野村 祐之
  

ページ上部へ戻る