こころの散歩

赤ちゃんの勝訴

赤ちゃんの勝訴

 シカゴの著名な裁判官グッドノー氏は、家庭に関わる裁判の経験から「十中八、九は、子供の助けを借りると男の後悔ややる気が動くものだよ。」と言うことがよくありました。
 裁判官の前には、屈強な、骨太の赤毛のトラックドライバーが起立していました。彼は妻と子供の扶養義務を放棄した罪で訴えられていたのです。彼は妻の涙ながらの訴えにも裁判官の叱責にも動じる様子もなくかたくなに突っ立っていました。すると、突然グッドノー裁判官は、ソロモン王のように心を決めて、男に向かって言ったのです。「その赤ん坊を受け取りなさい。母親には重過ぎるから。」
 父親は振り向いて赤ん坊を受け取りました。赤ん坊は父親の視線に喜びキャキャと声を上げ、足をばたばたさせました。やがて父親の腕の中で安心しきったように静かに抱かれていました。それから赤ちゃんの小さな手は、父親の頬を叩いたりして、赤ちゃんらしい声を盛んに上げていました。すると突然父親は崩れたのです。彼の中のツッパリが取れたのです。彼は涙声で喋り出しました。「裁判官、もう一度この赤ん坊のところに私が戻れるようにしてください。神に誓って、私はやらなければならないことをやります。」
 そして記録によれば、その後、かれはその言葉どおり実行したということです。

“Tonne”より
  

ページ上部へ戻る