こころの散歩

5つの米粒

5つの米粒

 私は村の小道を戸口から戸口へと物乞いしながら歩いていた。その時、はるかかなたに、あなたの金の馬車がまるで夢のように現れた。王のなかの王、この方はいったいどなただろう、と期待に胸をふくらませた。
 私のどん底生活ももうこれで終りだ、と天にも昇る心地だった。そして、寛大な施しと、ばらまかれる金銀を期待しながら、心躍らせて待っていた。
 馬車は私のそばに来て止まった。あなたは私を一目見て、微笑みながら降りて来られた。私の人生にもようやく幸運がめぐって来た!と感じた。ところが、あなたは右手を差し出して、私に言われた。
 「何か私にくれるものがあるかね?」
 なんてこった! 物乞いに向かって物を乞うとは、なんといたずらな王様! 私はうろたえて、どうしたものか当惑していたが、やがて、物乞いの袋の中から一番小さな米粒を5つ取り出して、あなたに渡した。
 日も暮れかかり、袋の中身をあけて、貧しいもらいものを床に広げた。その時、私はがらくたの中に、5つの小さな金の粒を見つけて驚いた!
 そして、おいおい泣きながら、私の持っているすべてをあなたに差し上げる真心を持たなかったことを悔やんだ。

  
画: フェリペ・オカディス
  

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