2007年1月  4.平和と女性
 平和について教えることは、真理、正義、愛、自由という諸価値を受け入れるように心と精神を啓発することを意味しています。これらの価値は、人生のあらゆる状況を含んだ教育計画、生涯にわたる教育方針なのです。ところで、女性たちは、人と人とのかかわりのなかで、世代間や家庭のなかで、諸国の文化的・社会的・政治的な生活のなかで、そしてとりわけ対立と戦争の状況のなかで、つねに平和の証人、伝達者、平和の教育者でした。女性は、平和のための教育という素晴らしい役割を果たすように呼びかけられているのです。そして彼女たちが、言葉と行為において表現し、悲惨な出来事にあたっては悲しみに満ちた沈黙で表わしている平和へのあこがれを尊重するようにと勧めます。

 平和の教育者であるために、女性はまず自分自身のうちに平和を育てなければなりません。内的な平和は、神から愛されていることを知ることと神の愛にこたえる望みによってもたらされます。歴史は、この意識に支えられて、搾取や差別、暴力、戦争といった困難な状況に対処してきた女性たちの素晴らしい模範で満たされています。
 また、子どもたちを育てるなかで、母親は単独で重要な役割を担っています。母親は、とりわけ子どもが小さい頃に、母親と子どもを結んでいる特別な関係を通して、子どもが自分のアイデンティティを正しく発達させ、その結果として、他者とのはっきりとした実り豊かなかかわりを築くことが困難にならないように、安心と信頼の感覚を与えます。この母親と子どもとの最初の関係はまた、宗教の領域において非常に特別な教育的意味をもっています。なぜならこの関係が、何らかの正式な宗教教育が始まる前に、子どもの心と精神を神に向けさせることができるからです。
 この最初の教育は非常に重要です。もしも両親や他の家族とのかかわりが愛情と積極的な相互関係によって特徴づけられるなら、子どもたちは、平和を促進するための諸価値を自分たちの経験から学ぶことでしょう。この諸価値とは、真理と正義への愛、責任ある自由の意識、他者に対する尊敬と親愛の情です。同時に、子どもたちが温かく自分たちを受け入れてくれる環境で育つ時、自分自身の家族関係を思い起こすことで、彼らは神ご自身の愛を理解することができるのです。つまり、この環境は、他者と自分たちの隣人に自分を与える寛大さを育てることができる精神的な雰囲気において、子どもたちを成熟させることができるのです。平和教育は、発達のあらゆる時期を通して自然に続けられます。この教育は、とりわけ青年期の困難な時期の間に奨励される必要があります。つまりそれは、子ども時代から大人へ移行する時、人生にとって決定的な選択が求められている若者にとって何らかの危険がいつもつきまとうからです。
 女性たちが自分たちの才能を共同体全体で十分に分かち合う可能性をもっている時、社会が評価し組織している様式そのものが改良され、人類家族の本質的な一致がさらによい方法で呼び覚まされるようになります。これこそ、確実な平和を強化するために最も重要な条件です。女性たちが、地方や国家、国際的なレベルでの社会的、経済的、政治的な分野において、その存在を広げてきていることは、非常によい進展を表しています。女性たちは、公的生活のあらゆる領域に参加することができる完全な権利をもっています。この権利は、必要な場合、ふさわしい法律によって承認され保障されるべきものです。
写真: 片柳 弘史