2007年2月  2.富の不公正な分配
 病者の苦しみを増している原因の一つは、健康を保つための富が公正に分配されていないことです。創造主が望んでおられる富の公平な分配は、医療の分野においても急を要する課題です。様々な形の不正義、特に、貧しい国の人々がこうむっている不正義が解決されなければなりません。そこには、本来、人の命を救うためにあるべき製薬会社や医療の研究が、利益の追求を優先しているという問題があります。
 「すべての人の健康」を促進することは、国際社会のすべてのメンバーにとって第一の務めです。さらに、キリスト者にとっては、自分の信仰の証しにかかわる機会です。
 貧困にあえぐ様々な地方や国の人々の差し迫った必要に勇敢に応えながら、医療の分野で寛大に奉仕する個人および団体、ことに宗教関係の施設や活動の功労は評価すべきものです。彼らは、病者に必要な医療と看護を提供すると同時に、病者が信仰のうちに自分の困難な状況を生きていくための霊的支えをも提供するように招かれています。
 医療行為にあずかる機会における深刻な社会的不平等は、世界の広大な地域に、ますます広がっています。そしてこの不正な不平等は、劇的な勢いで人々の基本的人権を侵害しています。人々が基本的な薬さえ手に入れることができない地域がある一方で、別の地域では高価な薬が浪費され誤用されています。さらに、飢えをしのぐための最小限のものにも不足し、ありとあらゆる種類の病気に侵されている多くの人々がいます。
 これらのことがらは、不幸にも多くの場合、経済的、科学的、技術的な発達が、人間とその侵すことのできない尊厳に焦点をあてた真の進歩をもたらしはしなかったことを示しています。このような矛盾と逆説的状況は、一方では福祉の論理と技術的進歩の追求との不調和から生じ、また他方では、すべての人間の尊厳に基づく倫理的価値の論理と技術的進歩の追求との不調和から生じているのです。
 この不正をなくす方法と勇気を神が与えてくださるように、そして、私たち一人ひとりが、神の導きに従って、医療を受けることができないままにいる貧しい病者の必要に応えることができるように、祈りたいものです。
写真: 片柳 弘史