2007年2月  3.エイズ
 エイズは「精神的な病理」の症状でもあります。真剣にエイズと闘うためには、教育を通してその防止のために努力しなければなりません。その教育とは、いのちの尊厳を教えることと、正しい性教育を行うことです。
 血液を媒体とする感染、とりわけ、あらゆる手段をもって阻止すべき妊娠の過程による感染がたくさん発生しているとすれば、性行為による感染の数は、なお多いはずです。このような感染は、責任ある行動と純潔を守ることによってのみ防止できます。
●UNAIDS(国連合同エイズ計画)およびWHO(世界保健機関)の調査によれば、HIVの感染者は年々増加しており、現在、全世界で4,030万人(累計)に達し、世界中に感染が広まっています。
○日本のHIV感染者・エイズ患者の現状
(厚生労働省エイズ発生動向調査:2006年1月1日現在)

●2005年の国内のHIV感染者は778人(2005年までの累計で7,338人)、エイズ患者は346人、(2005年まで累計で3,623人)が報告されており、HIV感染者・エイズ患者は増加しています。

●HIVが流行した先進国の中には対策が効果をあげ、現在感染者の増加が押さえられつつある国もありますが、日本では依然として感染者・患者ともに増加が続いています。
 だれもがエイズとの闘いに参加しようという気持ちをもつべきです。この問題において、一般市民に対してわかりやすく正確な情報を提供し、若者たちに健康管理面での指導をするための十分な資金を確保しておくことも、政府の指導者たちや行政当局の任務です。この分野において国際組織が知恵と連帯に促されながら、率先して活動していくこと、また、彼らの活動が常に人権を守ることを目指し、侵害されてはならないいのちの権利を守ることが必要です。
 製薬業界がエイズの治療のために使われる薬剤を安価で提供していることは称賛すべきことです。医療部門において、科学的研究のために財源が必要であることは言うまでもありませんし、新しく開発された薬品を市場に出すためにもさらなる財源を必要とします。しかしエイズのように緊急な治療を要する状況においては、何よりもまず人のいのちを守ることを最優先する必要があります。
 故ヨハネ・パウロ2世は司牧者に次のように願っています。「エイズに冒されている人々に可能な限りの物質的、道義的、精神的な慰めを与えてください。世界中の科学者、政治指導者に切にお願いします。すべての人に示されるべき愛と尊敬によって可能な限りの手段を講じ、この苦難に終わりをもたらしてください。」
 善きサマリア人のように、エイズで苦しんでいる人びとのそばに寄り添い、その身内の人びとのお世話をすることに自らをささげている、実に多くの医療関係者、チャプレン、ボランティアの方々がいます。また、多数のカトリック医療団体が、あらゆる疾患、とくにエイズ、マラリヤ、結核などで苦しんでいるアフリカの人びとの援助のために手を差し伸べています。これらのことは称賛すべき行為です。