2007年2月  5.クラスター爆弾
 2月22日〜23日、ノルウェーのオスロで「オスロ:クラスター爆弾会議」が開催されました。この機会に、クラスター爆弾がもたらす市民への被害について、考えてみましょう。
 クラスター爆弾は子爆弾に別れて無差別に市民を襲うとても危険な兵器です。クラスター爆弾は国際条約に違反する兵器ですが、国際法に違反するかどうかを決定し、犯罪であれば制裁を加えるべき機関がないので、放置されています。
 力のある側が力でごり押しすれば、違法だろうと何だろうといくらでも使えますが、力のある側が無い側の持つものを「違法だ」といって取り上げようとすればできてしまいます。例えば、1999年はコソボ紛争中NATO(北大西洋条約機構)による空爆、2002年はアフガニスタンに対する米軍の大量のクラスター爆弾投下、2006年8月はイスラエル軍によるレバノンの広範にわたる投下などが挙げられます。コソボ全土には、およそ1200回のクラスター爆弾による攻撃がありました。終結(2000年)から6年たった昨年の11月までに、死者は53人、負傷者は111人でした。その多くは子供たちでした。
 また、レバノンでは、イスラエル軍によるクラスター爆弾攻撃の90パーセントが、停戦が発効する直前の72時間に行われたという国連の報告書が公表されました。国連地雷行動調整センターによると、これまでのところ、クラスター爆弾によって攻撃された地域が400か所以上あり、10万個以上の小型の不発弾が散らばっているため、故郷に帰還する途中の何十万という老若男女に多数の犠牲者が出ています。
 クラスター爆弾は多数の小さな爆弾を撒き散らし、敵の兵士や車両を一度に攻撃するための兵器ですが、不発弾となった場合、一見して爆弾と見分けるのが難しいので、市民、特に子供たちがおもちゃやパンと間違えてそれに触って死傷するケースが多いのです。

 ナシリア(イラク)のハラ・ハッサン君(写真)と彼の弟が地面にあった茶色の筒に気がついた時、まさに遊んでいる最中でした。「彼らはボールの類と思っていたようだ」とハラ君の叔父は泣きながら言っています。しかし二人の子供たちがつまみ上げた物体は、クラスター爆弾の不発小爆弾でした。庭からは離れていたが、コンクリートでできた壁には6インチ程度の穴ができました。小さな爆発物の破片がハラ君の脚とアリ君の顔面に突き刺ささりました。
 その二日前には、7〜14歳の子供3人が殺されました。500ヤード離れた2人が同じような悲劇によって負傷したのです。
 この度のノルウェーでの国際会議「オスロ:クラスター爆弾会議」の実りを見守っていきましょう。
クラスター爆弾禁止、条約制定へ「宣言」採択 (2月23日23時3分配信 読売新聞)

 【オスロ=渡辺覚】多数の子爆弾を搭載し、不発弾被害が残るクラスター(集束)爆弾の使用・生産禁止を目指してオスロで開かれていた国際検討会議は23日、参加49か国中46か国が2008年末までに新たな条約を制定する目標を明記した「オスロ宣言」を採択して閉幕した。

 北朝鮮の脅威などを背景に「抑止力」としてクラスター爆弾を保有する日本は、「議論が不十分」として、宣言への参加を留保した。

 宣言は<1>クラスター爆弾の使用・生産・移動・備蓄の禁止<2>保有弾廃棄・不発弾除去の推進<3>被害者支援――の目標を示し、賛同する有志国で新条約を制定する道筋を確認した。

 日本は会議に代表団を派遣したものの、「安全保障上の問題も含め、クラスター爆弾をめぐる議論が十分に尽くされたとは思えない」(平野隆一・外務省通常兵器室長)との立場を強調。クラスター爆弾が抱える人道上の問題点には懸念を表明しながら、有志国のみが先行する条約制定の動きに慎重な姿勢を示した。ポーランド、ルーマニアも宣言参加を見送った。クラスター爆弾を大量に保有する米露中は出席しなかった。