2007年9月  2.旅人に宿を貸す
 マタイ福音書の中でイエスは、「わたしが旅をしていたときに宿を貸してくれた」(マタイ25・35)と語っています。このように語ったイエス・キリストの心を思う時、旅人=移住移動者の問題は、私たちキリスト者への愛と信仰への問いかけとして受け止めることができるのではないでしょうか。遠く故郷を離れ、生きるために懸命になって働く移住移動者たちのために、私たちは何を祈り、何を行なうことができるでしょうか。

 私たちの世界には約1億7500万人の移民がいます。これは、世界の総人口の約40人に1人という割合です。彼らは、より良い生活条件や環境を求めて、単身あるいは家族と一緒に自国を離れ、外国で居住している人々です。こうした現象の背後には、南北間の経済格差、政治的状況の不安定など、複雑で大きな問題があるのでしょう。私たちは、そうした問題の中で苦しみ、叫ぶ人々の痛みを、けっして見過ごすことはできません。

 同時に、私たちのごく身近で暮らす「旅人」に、愛を尽くすことも忘れてはいけないでしょう。福音にあるように、渇いている人に水を差し出し、裸の人に着せ、苦しんでいる人に慰めの言葉をかけ、疲れている人に微笑む、そうした小さな愛の行いは、今、私にできることです。

 イエスは、さらに深い神秘を明らかにしてくださいました。旅人に対する、そうした小さな愛の行いを通して、私たちがキリスト自身に出会っているということです。「この最も小さい者の一人にしたのは、わたしにしてくれたことなのである」。渇く人、貧しい人とイエスは一体であり、人間の悲しみ、苦しみ、絶望はまさにイエスそのものの姿なのです。

 移住移動者の現実の中に、苦しむイエスの姿を見出ことができるように、祈りましょう。そして、今、私にできる小さな愛の行いを、そのイエスに捧げましょう。