2007年12月  1.エイズ
 1981年にアメリカで原因不明の患者5名が発見され、エイズ(AIDS:Acquired ImmunoDeficiency Syndrome:後天性免疫不全症候群)という病名が付けられました。日本では1985年に最初の患者が発見されましたが、この病の起源は、西アフリカもしくは中央アフリカで、1920年代か30年代に「種と種のあいだをこえたウイルスの感染」がおこって、そこから発祥したと考えられています。そして今もなお、このウイルス(HIV:通称エイズウイルス)感染症は、全世界に拡大しています。全世界で3940万人のHIVの感染者・エイズ患者がいると言われ、そのうち60%がアフリカに集中しています。また毎年300万人の人々が尊いいのちを落としていて、日本でも1日に3.7人が感染していると言われています。
 世界保健機関(WHO)は、1988年にエイズ患者やHIV感染者に対する差別・偏見を解消するための意識を高めることを目的として12月1日を「世界エイズデー」としました。

 私はあるとき、とてもリズミカルで素敵な音楽を耳にしました。キラキラと光るようなギターの音色が特徴でした。みんなで一緒にダンスができるような優しいリズム。そしてそこには「愛してる(ディマクコンダ)」の言葉が何度も何度も繰り返されます。これはその歌詞の後半部分です。

「僕たちはVCI(エイズ検査・カウンセリング)に行くことを決めた
愛する君を傷つけたくなかったから 医者に見てもらい、結果を待った
心臓がバクバクと鳴った 神様に祈った
そして医者は言った 落ち着いて聞いてください
検査結果はここにあります 彼氏は残念ながら HIVポジティヴですと
僕はどうすればいいんだろう
泣かないで 君は素敵だから 他にいい男を見つけてくれ
愛してるよ 君が僕を愛してるのも知ってるよ
神さま もう一度だけチャンスをください
そしたら君は突然泣きやんで僕に言ったんだ
何言ってんのよ 私たちはずっと一緒よって」

 東アフリカにマラウイという国があります。その国で、一人の日本人青年、山田耕平さんが作詞し、マラウイのヒットチャートで1位を獲得するまでになった、エイズ予防と啓発の歌です。エイズウイルスに感染した男性が悩み、彼女を愛するがため別れを決心するというカップルの物語を通じて、愛しているからこそエイズ検査を受けようと呼びかける内容で、マラウイの母国語・チェワ語で歌われています。この歌は、現代社会に暮らす私たちにとっても身近になりつつある深刻な問題について、陽気なメロディに乗せた温かみのあるメッセージとともに優しく教えてくれています。またそれは明るさの中にも願い、祈りを感じさせてくれます。

 さて、「ディマクコンダ」のCDジャケットの裏に赤いリボンのマークがあるのに気づきました。これは、HIV感染者・エイズ患者への理解と支援の意思を表すシンボルだそうです。「私は、エイズに関して偏見を持たないし、エイズと共に生きる人々を差別しない」というメッセージです。エイズを克服するために、レッドリボンを知り、これを身につけることによって、エイズについて、みんなで考えてみましょうというキャンペーンなのです。

 今ここで、1989年バチカンでのエイズ会議でヨハネ・パウロ2世が述べられた言葉を思い浮かべて、ひとときの祈りを捧げたいと思います。
 「エイズを患っている人々よ、たとえエイズが他に類を見ない病状であっても、あなた方は、他の病んでいる人々と同じように十分な診察、丁重な理解、完全な連帯を得る権利があります。神を創立者として、また師として模範にしている教会は、常に病んでいる人々を援助することを基本的使命としています。教会は現在、自分がこの人類の新しい苦しみの分野の主導者として立ち上がるように要求されていると感じ、苦しんでいる人が伝道と司牧の「特別な道」であることを認識しています。」