2008年2月  1.心に病を抱える人とその家族
 A子さんはもう何年間もうつ病の治療を受けています。A子さんはお母さんと二人暮らしです。今は働いていません。ずっと家にいます。A子さんの今の悩みは仕事ができないことでもなく、この病が長く続いているということでもありません。A子さんは、お母さんが自分の病を理解してくれないということに苦しんでいるのです。A子さんは、病気が原因で何もする気が起きず、一日中、ずっと家にいるのですが、その姿は怠けているように写るのです。たまにA子さんが食事の用意をするのですが、料理のことでも細かく注意されます。生活上のことでも、お母さんは、口を開けば文句ばかりなのです。

 親が子に対して抱く思いには、矛盾した二つのことがあると言われています。一つは、早く親を追い越して、立派な大人になってほしいと思うこと。もう一つは、子が親を追い越すことができないほどに、親として立派でありたいと思うことです。この二つの思いは、すべての親に備わっている自然な思いで、だからこそ愛を込めて子どもを育てることができるのです。ところが、子に病や障がいがあると、親は生涯にわたってこの思いが決して叶えられることはないと失望してしまうのです。ですから、病や障がいを受け入れることは、希望をつないでおきたいと願う親にとって、非常に難しいことなのです。

 障がいや病を持つ人々には、世間の目や社会の価値からは推し量ることのできない豊かさが、神の恵みとして注がれています。病の中で生きる人が、その豊かさを家族や身近な人とともに見つけ出すことができれば、一つひとつのいのちは、輝きを放つようになるでしょう。
 心の病を抱える人と、その家族が、神の恵みに気づくことができるように、私たちも心を合わせて祈りをささげましょう。