2008年2月  3.心の病と偏見
 C子さんは数年前に離婚をしました。原因はC子さんが心の病になったことでした。子の親権についても裁判所で争いましたが、認められませんでした。母親であるC子さんにとってはまだ幼い子どもと離れるのはつらいことでした。C子さんは離婚の後、郷里の実家に戻りましたが、そこにC子さんの居場所はありませんでした。C子さんの両親は世間体を気にしていました。妹さんから厳しい言葉も聞かされました。
 C子さんは心の病の症状が落ち着いた時に、再度人生をやり直す決心をして、田舎から出てきました。そして資格を取るために学校に入りなおしたのです。現在は狭いアパートで独り暮らしをしています。昔の家具はすべて捨ててしまいました。使いやすかった鍋や調理器具もすべて捨ててしまいました。昔の暮らしを思い出すものを、視界から消し去りたかったのです。
 C子さんは今、親からの仕送りで生活し、その中から学費も払っていますから、余計な物は何も買えません。そして、ここ数日気持ちが重く学校にも行きたくないのです。昨日も家に居てほとんど食べていないのです。何か食べなくてはと思い、ようやく近くのコンビニで菓子パンを買ってきたのです。このまま死んでしまおうかという気持ちも頭をよぎります。そうすれば仕送りをしている親にこれ以上迷惑をかけずにすむ。もう子どもと一緒に暮らせる希望もない。そんな思いにとらわれてしまうことがあるのです。

 カトリック教会での結婚式では、順境にあっても逆境にあっても、病気のときも健康のときも、生涯、愛と忠実を尽くすことを誓います。心の病も、病気です。病気のときこそ、夫あるいは妻、親、兄弟・姉妹の愛が必要です。C子さんの病気が、心の病ではなく、癌(ガン)であったならば、状況はどのように変わっていたでしょうか。
 偏見や差別を抱かずに、心の病についての正しい認識をもつことができるようにと、心がけて参りましょう。