2008年9月  2.難民が安心して暮らせる環境を
 今年8月28日アフガニスタンで武装勢力に誘拐された一人の日本人男性が遺体で発見されたというニュースが流れました。この人はパキスタンとアフガニスタンで病院を運営している日本のNGOペシャワール会医療サービスから派遣されて、5年前からアフガニスタンで農業用水路建設や農業指導に携わっていた農学部出身の31歳の男性でした。
 世界で難民が最も多く発生している国がアフガニスタンなのです。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の2008年6月発表の報告書『グローバル・トレンド』によれば、主にパキスタンとイランに逃れた約300万人のアフガン難民は2007年に世界各地でUNCHRの支援を受けた難民のほぼ1/4を占めた、ということです。
 難民は故郷に帰還しても自分の家が破壊されていたり、家は残っていてもそこは新政府が他の避難民族の家族にあてがってしまっていたので自分たちには住む所がない、あるいは折悪しく異常気象で旱魃が続いたため農地は荒地になってしまって農業ができる状態ではなくなっている等の事情から紛争が終結しても帰還できずにいることが少なくありません。
 ペシャワール会医療サービスでは医師中村哲さんを現地代表として現地でアフガニスタン人との協働運営組織を作り、農地が荒れて耕作できずにいたアフガニスタン人の農民をたくさん雇い、2003年から2007年まで4年がかりで「第1期工事として総延長13.1Km、1日最大送水量50万トンの灌漑用水路を完成したのでした。結果として砂漠化から回復して耕作できるようになった田畑が800町歩、渇水時に送水できる耕地は約2000町歩、次の第2期工事総延長7Kmによって潤しうる灌漑面積が推定5000町歩以上となった。一木一草もなかった荒地に緑がよみがえった。水が来たということを聞きつけて避難先のパキスタンから戻ってきた農民がたくさんいた。」(『医者、用水路を拓く』中村哲著 石風社 2007年)
 誘惑された日本人男性はまさにこの活動に携わっていた一人なのです。この伊藤和也さんの冥福を祈ると共に、難民や国内避難民の人権が擁護され、安心して暮らすことができる環境が早く整えられるために、また、そのために働く人々の安全が確保されるように、私に与えられた使命を探して、祈ってまいりましょう。