2010年1月  3.情報革命と若者
 教皇ベネディクト16世は、1月の意向として、「若者と社会的コミュニケーションとメディア」を取り上げました。この背景には、IT(Information Technology)革命といわれている技術革新が、情報の保存、伝達、検索に信じられないほどの大きな変化をもたらしたことがあります。そして、たくさんの人びとがその恩恵を受けながらも、その利用の仕方を誤って、若者の健全な成長に悪い影響が生じていることも見逃してはなりません。
 コンピュータの最小単位では、情報は0(ゼロ)であるか1(いち)であるかに置き換えて電子的に処理されます。デジタルとは、このことをさします。ですから、このデジタル化された情報を、物理的に小さな回路で大量に処理できることをめざして、技術革新が進められました。パソコンはもとより、それを世界的な情報ネットワークで結んだインターネット、電波に乗せてその情報を通信できるようにする技術によって携帯電話が、私たちの生活を便利にしたのです。デジタル化された情報が高速で処理されると、何億もの中から一つを探し出す作業が極めて短時間でできるようになります。ですから、コンピュータの得意技の一つは、検索の機能だと言えるでしょう。生活の一部となった情報機器は、対面的な生の情報伝達の機会を一層減らし、バーチャル(仮想現実)と今この場所で生きているという現実の境界を取り払ってしまう力さえ発揮しそうです。
 情報技術の発展とともに、パソコンや他のデジタル機器と付き合ってきた世代の感覚と、すでにパソコンやインターネット、電子メール、携帯電話が普及した段階に時代に生まれ育った今の子どもたちの感覚は全く違っているのでしょう。闇の力がこの情報革命の中で働いて、誹謗中傷を匿名で発信するインターネットの掲示板やブログ、卑猥な映像や、違法な取引に誘い出そうとするサイトなどが、巷(ちまた)にあふれています。この環境の中で育っていく子どもたち、若者たちが、健全な社会的コミュニケーションを身につけることができるようになるために、教会は大きな責任と使命を持っていることは間違いありません。
 情報革命の功罪をしっかりと見極めて、この課題に取り組むことができるように、日々心を配ってまいりましょう。