2010年4月  1.クラスター爆弾
 聖週間を迎えます。聖なる過越しの後、主の復活を喜びのうちに迎えることができるように、今週の典礼にしたがって祈りを深めてまいりたいものです。
 さて、日本の教会は今月の意向に「対人地雷とクラスター爆弾の禁止」を掲げました。ここではクラスター爆弾についての基礎知識を学び、その非人道的な兵器の廃絶を、強く祈り求めてまいりましょう。
 クラスター (cluster) とは、英語で「房」を意味します。そこから派生して、数個から時には数十個、数百個のまとまった固まりのことをクラスターと呼ぶようになりました。クラスター爆弾とは、一つの爆弾ケースの中に、数個から数百個の小型爆弾や地雷を入れて投下し、ケースが炸裂するとそこから子弾がまき散らされて、広範囲の目標に損害を与えることができるように設計されたものです。このクラスター爆弾には、二つの大きな問題があります。その一つは、不発弾です。炸裂した親爆弾から散りばめられた子爆弾のうち、不発だったものがあると、戦闘が終了した後にも、たとえば子どもたちが近づいたときに爆発して、市民も犠牲になってしまうことがあることです。
 第二の問題点は、対人地雷が子弾となってまき散らされることです。そもそも地雷とは、それを踏みつけると爆発する仕組みになっています。対人地雷はとても非人道的な兵器です。戦争状態においては、兵士が瀕死の重体に陥ることのほうが、兵士が死んでしまうことよりも被害が大きいことは、理解できますでしょうか。死んでしまえば、その人を救命する必要がありませんので、傷を負っていない兵士は戦闘することができます。しかし、瀕死の重傷を負った兵士がいれば、その兵士のいのちを助けるために、傷を負っていない兵士は、戦闘ではなく救命にあたらざるをえません。ですから、対人地雷は、殺すためではなく、重傷を負わせるように、設計されているのです。何と非条理な兵器なのでしょうか。
 この対人地雷が、クラスター爆弾によって戦場に散りばめられると、その地域は誰も足を踏み入れることができない地獄と化してしまうのです。
 2006年2月16日には、世界に先駆けてベルギーがクラスター爆弾を法的に禁止しました。2007年2月22日から23日には、ノルウェーが呼びかけたクラスター爆弾禁止に関する国際会議が、首都オスロで開催されました。49ヶ国が参加したこの会議では、参加国中の46ヶ国によって、2008年中にクラスター爆弾の使用・製造・移動・備蓄の禁止条約を実現させることを目指すという内容の「オスロ宣言」が採択されました。
 同会議に参加していた日本、ポーランド、ルーマニアの3ヶ国はこの宣言に加わりませんでした。アメリカ、イスラエル、ロシア、中国等、主要なクラスター爆弾の配備運用国は会議そのものに参加していません。
 2007年5月23日から25日には、ペルーの首都リマで68ヶ国が参加して「クラスター爆弾禁止リマ会議」が開催されましたが、禁止条約の草案の合意には至りませんでした。
 2008年5月28日のダブリンでの国際会議で、無力化機能を有する一部の型を除いて禁止する条約案がようやく合意されました。このような現状の中で、私たちはクラスター爆弾の廃棄に向けての運動に参加し、その実現を祈り求めてまいりたいものです。