2010年6月  2.アジアの教会
 「私たちがもうすぐ乗船することのほかには、これ以上ご報告申し上げることはありません。主なるキリストに天国で相まみえ、一致する恩恵を願ってやみません。なぜなら、インドはローマから非常に離れていますし、他の所を探さなくても、あちらにはたくさんの霊的な畑がありますので、私たちは(この世では)再会できないと思うからです。」東洋に向けて出帆する3週間前に、聖フランシスコ・ザビエルは聖イグナチオにこのように書き送っています。[書簡第11:リスボンより、1541年3月18日]
 4月7日、35歳の誕生日にリスボンの港を出航した聖人は、甲板からどのような思いで遠ざかりゆくヨーロッパの地を眺めていたことでしょう。幾多の困難と苦しみの末、16,800km彼方のゴアにたどり着いた時、人数は半減していました。時代が変わっても、ヨーロッパやアメリカからアジアに来られた現代の宣教師・宣教女たちも、聖フランシスコ・ザビエルと同じ思いを持ちながら故国を後にされたことでしょう。この宣教師たちのおかげで、私たち日本とアジアのキリスト者は神と出会うことができたのです。
 この宣教師たちの努力と献身に応え、アジア各国のキリスト者は人数こそ少ないにしても、強い信仰の持ち主が多く、インド、韓国、ベトナム、共産主義政府下の中国ほか多くの国でたくさんの殉教者を輩出し、最後の司祭が奪われた後も、信徒たちが協力し、励まし合いながら信仰を保ってきました。日本の教会も、日本二十六聖人から津和野の殉教者まで、苛酷な迫害にもめげず自らの血をもって証しした信仰の先達を、豊かにいただいています。
 数え切れないほどの宣教師と殉教者の、祈りと血と汗の結晶であるアジアの教会を改めて主にお捧げし、「よき牧者キリストの囲い」に入っていないほかの羊の救いのために全力を尽くして祈り、働きましょう。世界の人口68億7千万人のおよそ60%にあたる41億人の人々がアジアに住み、広大な主のぶどう畑が目の前に広がっています。