2010年6月  4.アジアの教会に託す希望
 わが国の教会で若者の教会離れ、信徒、修道士、修道女、司祭の高齢化、洗礼と召命の減少が問題化されて久しくなります。伝統的なキリスト教国といわれるヨーロッパ、北米にもこの傾向が見られます。しかし、これは全世界一律の現象ではありません。
 ある国際的な修道会の、今年度養成課程にある神学生、修練者、勉学中の会員は全世界で3705人、そのうちアジアとアフリカの会員が63パーセントを占め、中南米の養成中の会員(会全体の14パーセント)を含めると77パーセントの会員がアジア、アフリカ、ラテン・アメリカ出身であるという統計があります。
 アジアのなかでも、インド、ベトナム、ミャンマーなどの召命はめざましく、入会許可を待つ志願者が、ベトナムでは120人を越え、厳選された修練者が30人近くいます。フィリピン、インドネシア、韓国などは、ひところに比べると入会者が減ったとはいえ、まだ毎年4〜5人から7〜8人の安定した入会者に恵まれています。長い間「竹のカーテン」の向こう側で苦しんでいた中国のキリスト者の中からも召命が豊かに芽生え始めています。それに比べ 日本管区は修練者、神学生、養成中のブラザーや司祭を含めて16人あまりとごく少数です。
 これは一男子修道会の数字です。したがって全世界の教会、聖職者、修道者の現状を表すものではありません。しかしこの数字だけでも私たちに何かを語りかけているように思います。私たちのカトリック教会に大きな変化が起こりつつあること、今までの欧米中心の教会から、次世代にはアジア、アフリカ、ラテン・アメリカが大きな部分を占める教会へと移行していく、という趨勢を表してはいないでしょうか。
 この3つの地域に共通することは、巨大な地域と人口と未来への可能性を持ちながら、未だ十分にその可能性を生かすことが出来ず貧しさの中に苦しんでいるということです。特に長い間戦乱や他国の侵略に苦しみながら信仰を守ってきた人々の住む国で、生き生きした信仰生活、豊かな召命、若い力にみなぎっている教会を目の当たりにします。逆に、経済的発展を遂げ、高い生活水準、少子高齢化、世俗化の進んだ国々(欧米諸国、日本など)で教会の元気がなくなっているのが現状です。
 キリストご自身がペテロという岩の上にお建てになった教会全体は大丈夫、元気です。主キリストが約束されたように「陰府の力もこれに対抗できない」(マタイ16・18)のです。アジア全体の若い教会に希望を託しつつ、日本の教会も若返り、元気を取り戻しましょう。