2010年7月 3.都市文化における正義と連帯と平和 |
![]() 南洋諸島のある小さな島に、名物おじさんがいました。彼は若いころに事故で脳に障害を負ってしまい、うまく話すこともできず、ほとんど一日中島を歩き回って生活していました。魚を取るわけでもなく、農作業を手伝うわけでもなく、ただ一日歩いている。当然食べるものも、着るものもないはずです。しかし彼は毎日元気に島を歩いていました。人口が1万人にも満たない小さな島ですので、島に住んでいる人全員が親戚みたいなものです。彼が食事時に通りかかれば、そこの家が食事を提供し、彼が裸で歩いていれば、誰かがTシャツを与えていました。確かに島全体が絆で結ばれているような所では、経済的につまずいた程度で行き詰ってしまうとか、自殺してしまうということがないのでしょう。 現代の都市生活に慣れきっている私たちにとって、絆を作っていくことは面倒にも感じられます。自分が困っている時はライフラインになりますが、自分が困っていない時には足枷(あしかせ)にもなります。それでも、真の人間的生活とは何かを考えて、再び人間的な絆を築できるように、日々の生活を見つめ直してまいりましょう。 |