2010年8月  2.本気で向き合うということ
 一人のシスターが、強盗犯罪で拘置所に入れられてしまった一人のフィリピン人少年のために力を尽くしています。その少年は、小学校高学年で日本にやってきたため、日本語の習得が思うように行かず、高校で学業から離れ、強盗集団に入ってしまいました。家庭環境、言葉の壁、さまざまな障害を裁判では斟酌してもらえず、厳しい判決がくだってしまいました。彼の社会復帰のために少しでも減刑をと、弁護士とともにシスターは奔走しています。彼に会いに拘置所に通うシスターは言います。「申し訳ありません、母親のことをよろしくお願いします、と礼儀正しく答える彼には社会復帰の希望を感じるのです。なんとかしてあげたい」と。日本の社会に適応しようと努力していた少年が、最後に折れてしまったその決定機は何だったのでしょうか、と尋ねると、一つの答えが返ってきました。「中学校では、面倒をみてくれるよい先生との出会いがあり、彼を支えていました。しかし、高校に進学してから、そのような先生、大人と出会うことができなかったことは大きいでしょう。私たち大人一人ひとりに、どこかで出会うそのような子どもたちと真剣に関わっていかねばならない責任があるのではないでしょうか」と。
 私はいま、週に一度ですが、外国人移住者の子どもの日本語教育のボランティア活動に携わっています。できることは限られているのですが、彼のこれからの将来のために、一時一時、本気で向き合い関わっていこうと、シスターとの話しを通して思いました。私たちの周りで、困難にぶつかっている人々を受け入れ、誠実に関わっていくこと、向き合っていくこと、そのようなささやかなことが、未来の平和へとつながっていくのでしょう。平和旬間にあたって、この恵みを願いたいと思います。