2011年7月  1.エイズで苦しむ人々を心にとめて
 近年、市場原理に基づいた経済的な競争は、世界の各地域に大きな影響を与えています。
 市場を中心とした協力や開発は、ますます国や大陸を超えたものに発展し続け、人々は世界を相互依存の場として意識するようになりました。他方では、貧富の格差が広がり、様々な理由で移動、移住することを余儀なくされた人々が増えています。経済的な競争は環境にも影響を与え、各地域に汚染や破壊を引き起こして、地球規模で取り組まざるを得ない状況を生み出しています。
 今月の意向の一つは、エイズで苦しんでいる人々を心にとめて祈ることですが、地球規模で生じているエイズの現実を深く知り、彼らと相応しい連帯を築いていくために、どのような視点を持って関わるのかが問われるところです。なぜならば、どんな場合にも、人々が究極的に必要としているのは、人々から理解され慈しまれることを通して得られる心の癒しだからです。
 多くの場合、苦しむ人々の現実には、社会の様々な問題が凝縮されています。ある場合には、貧しさであったり、人々の無理解による差別であったり、エイズの場合には、エイズに罹患した母子の問題、また、エイズで両親を亡くした孤児の問題もあります。苦しむ人々の視点から何が見えるのか、彼らに触れてそこから見えてくるもの、それは、人を限りなくいとおしく思う体験なのかもしれません。苦しむ人々と連帯することは、「根本的な問題解決への取り組み」をも含んでいます。「連帯」することが、正義に基づく愛、あるいは、愛に基づく正義に根ざしているならば、その選びは、「彼らとともに、根本的な問題にもかかわる」ことを含むはずだからです。
 エイズで苦しむ人々を心にとめて祈るとき、このような視点をも同時に求めて祈ることができれば幸いと思います。