2011年9月  1.古いもののほうが良いのか
 今年3月11日の東日本大震災以来、日本は大きく揺れに揺れています。地震、津波、原子力発電所の3つの災害に一度に出会って、今までの生活方法を維持しようとしてもどうにもなりません。
 しかも天災、人災と言われて、人々は口々に「神も仏もあるものか」と言いながらも、大津波の後の撤去もできない瓦礫の間から、草は芽生え、鳥が飛んでいるのを見てほっとします。それに対して人災と言われている問題では、人間の責任に対しては、いまだにどうすることもできません。国民は未来についての不安に脅かされています。特に小中高生の不安は想像を超えるものがあります。この4ヶ月の間に3回も転校を余儀なくされた生徒が「友だちが欲しい」とつぶやいているのが聞こえてきます。
 今度の東日本大震災で全てを失って、帰る所もない人々は「昔は良かった」と過去を懐かしく思い出しています。しかしキリストは「新しいぶどう酒は新しい革袋に入れろ。」(ルカ5・38)と言われます。経済活動を最も優先するように言われて、競争社会をひた走りに走ってきた日本は、今新しい時代がやって来ていることを受け止めなければならないのでしょう。天災と言われていても、瓦礫の間から新しい生命は芽生えてきています。
 日本で教育に携わっている人々は、今、生きようとしている生命、さらに新しく芽生えてきている人のこの生命を、慎ましく、互いに愛し合い、分かち合って生きていくようにと、愛を持って育てていかなければならないでしょう。