2011年11月  3.橋渡しする作業
 私たちが使っている言葉というものは、私たち自身のいのちに伴って生きているものです。言葉はその国、その地方、その地域、そして、その時代の人々の生活する現実の中に存在し、人々の間の伝達と交流の手段であると同時に、ものの見方・捉え方や考え方、問題を解決する筋道、それらの表現の方法などを支え、また人々の間で共有するための重要な手段です。世界には長い歴史を通じて、様々に異なる限りなく豊かな文化・伝統があり、その豊かさを、様々に異なる多様な言葉が支えています。翻訳という仕事は、そのような互いに異なる文化の中にある人々の間を橋渡しする作業です。翻訳は、翻訳の元になる言語と、翻訳先の言語がそれぞれに持っている見方・捉え方や考え方、問題を解決する筋道、それらの表現の方法などを深く理解し受け入れ、その間をつなぐ接点を探っていきます。良い翻訳を行っていくためには、双方の文化とそれを担う人々への深い理解と受容、尊敬と愛を欠かすことができません。
 聖書の日本語訳の努力が続けられています。それは聖書が記された時代・地域の人々と、現代の日本に生きる私たちとの間を橋渡しし、啓示された神のみことばを、救いの使信を伝えていく重要な作業です。それはまた時間も距離も遠く隔たった文化の間をつないでいく、忍耐と根気を必要とする緻密な作業でもあります。聖書の日本語訳に携わっている多くの人たちの上に、聖霊の恵みが豊かにあり、その仕事に欠かすことのできない深い理解と受容、尊敬と愛を与え、救いの使信を伝えていく神の民の使命を果たしていくことができますように祈りたいと思います。