2012年5月  4.家庭の聖化
 愛を育む礎となっているはずの家庭が、危機にされされています。まずは、離婚の増加です。厚生労働省の人口動態特殊報告より計算すると、今日の日本では、結婚したカップルの4割が離婚するという実態が示されています。家庭を作り出すことが初めから難しい時代になりました。次は、DV(家庭内暴力)の頻発です。内閣府は今年4月20日、「男女間における暴力に関する調査」の結果を発表しましたが、それによると、結婚を経験した女性の3人に1人が夫から言葉を含む暴力被害を受けたことがあることを示しています。そして、そのうち4割が周囲に相談しなかったと回答しています。暴力の矛先は、子どもにも向かいます。平成22 年度中に児童相談所が対応した養護相談のうち「児童虐待相談の対応件数」は55,154 件となっていて、史上最悪の数値が示されました。
 私たちキリスト者は、この世俗の中で生活しているわけですから、教会の共同体の中にも、離婚、DV、児童虐待がまったくないとは言えません。むしろ、キリスト者であるからこそ、現実が見えにくい部分もあるでしょう。
 ところで、私たちが目ざす家庭とは、どんな姿なのでしょう。まずは、一人ひとりが大切にされることです。次に、愛は無償ですから、家族のためにはいつでも自分を差し出す心が求められます。また、一人ひとりが自立に向けて育まれなければなりません。
 また、家族はそのものが、外に開かれていることも大切なことです。周囲に苦しんでいる人や困っている人がいる時には、その人びとを一時的に家族の輪の中に入れて、自立までの道を支えることが望まれます。その人に自分たちの家の一室を提供するという、物理的なことだけを言っているのではありません。まるで家族の一人のように、自立の道を見守り支えることです。さらに言えば、キリスト者の家庭として、固有の使命をになっていることです。
 そうです。キリストを中心とした家族、家庭は、小さな教会なのです。キリストの愛といつくしみを証しする場として、家庭が聖化されるように、5月の教皇の意向と心を重ねて祈り、日々を過ごしてまいりましょう。