2012年7月  2.失業
 教皇は7月の意向に「仕事の保障」をかかげ、すべての人に仕事が与えられるように祈りをささげることを求めています。確かに、失業は世界中で深刻な問題になっています。しかし、失業という社会現象は、非常に複雑に絡み合った世界経済の影響によってもたらされているために、具体的に何をどのように祈ればよいのか、迷ってしまいます。「○○さんに仕事が見つかりますように」と祈ったところで、失業はなくならないのです。
 それではどうしたらよいでしょうか。究極的には、失業者に仕事を分かち合う、ワーク・シェアリングという考えを、世界中に広める以外に方法はないのです。仕事を持っている人がそれを独り占めしないで、失業者にも割り振るという考えで、ドイツで失業率が増加したときに生まれた考え方です。
 失業は飢餓と同じ構造で世界中に広がります。世界中で生産される食糧は、60億人の世界の人口のすべての栄養を満たすことができる量を上回っているのですが、世界では飢餓人口が9億人も存在しているのです。その理由は、経済的に豊かな国に食糧が集まって、しかも食べられるものまでが捨てられているのです。グローバル化した経済は、資本主義という自由主義経済の枠組みで動いているのですが、このシステムは、富めるものがますます富み、貧しい者がますます貧しくなっていく仕組みを内包しているのです。
 このシステムの弱点を補強するために、税制度や社会政策よる年金や福祉制度が整えられて、貧しくされた人と分かち合いながらともに生きていく仕組みに近づけようとしているのです。ところが、一つの国の中では法律によって税や社会政策が制度化されますが、国際的な関係においては富める国が貧しい国とともに生きていくための枠組みが、まだまだ弱いのです。国連は充分に機能を果たせていません。
 世界で最も失業率が高いのは(2011年の統計)マケドニアで32.23%に達し、3人に1人は失業者という深刻な状態が生じています。第2位はボツニア・ヘルツェゴビナの27.60%で、旧ソ連の東欧で高い失業率が示されています。3位が南アフリカ、4位がナイジェリアでアフリカの国々ですが、5位にアルメニアと東欧が、そして6位にかつてヨーロッパで最も栄えた国の一つであるスペインがランクされ、失業率は21.64%です。日本は82位で4.55%です。
 自由主義経済の仕組みの弱点を克服するためのもう一つの知恵は、寄付金とボランティア活動です。税は強制的に拠出させられる相互扶助の仕組みですが、寄付金は自発的な相互扶助の仕組みなのです。新しい経済システムが構築されるまでは、新しい経済学が誕生するまでは、この自発的な助け合いの手だてが、最も有効なのかもしれません。
 失業で生活が困窮している方々に、仕事を分け与えることと、寄付金によってその方々の日々の糧が整うことを願って、祈りをささげたいと思います。